■概要
フィリップモリスは上場している中で世界最大のタバコメーカーであり、本社はスイスのローザンヌにあります。
2021年度の売上高は314億ドル(約3.8兆円)です。
製造している銘柄ではMarlboro(マルボロ)やLARK(ラーク)が有名で、電子タバコのIQOS(アイコス)にも力を入れています。
ちなみに現在は米国国内でのビジネスをAltria Group(アルトリアグループ)が、その他のエリアでのビジネスをPhilip Morris (フィリップモリス)が行なっています。
セクターはConsumer Staples (生活必需品)で一般消費者に馴染みのある商品を取り扱う企業群に属しています。
好況不況に関わらず安定的な収益を上げやすく、連続増配銘柄も多いセクターであり、かっぴのお気に入りのセクターです。
このセクターにはウォルマートやP&G、コカコーラなどがあります。
過去15年の値動きはこんな感じで、あまり上昇しておらず、直近はウクライナ戦争の影響で大きく値下がりしました。
■財務データ
まずは売上高と収益性を見ていきましょう。
(million US $) | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 |
売上高 | 29,625 | 29,805 | 28,694 | 31,405 |
売上総利益率 | 64% | 65% | 67% | 68% |
営業利益率 | 38% | 35% | 41% | 41% |
利益率 | 27% | 24% | 28% | 29% |
売上高は 31,405million $ ( 円換算でおおよそ4兆円弱 )でタバコメーカーとしては中国の中国煙草総公司(CNTC)に次いで世界第二位を誇ります。
ちなみに日本最大のタバコメーカーJTの2021年度の売上高が2兆3000億くらいで、こちらは世界第四位となっております。
アルトリアグループからスピンオフして、アルトリアが米国内ビジネスを引継ぎ、フィリップモリスは米国外のビジネスを引き継いだことから、フィリップモリスの売上は上の図のように全世界に及びます。
特にヨーロッパの割合が高いため、ウクライナでの戦争が嫌気され、直近ではかなり値下がりしています。
収益性の数字を見ると売上高総利益率 (粗利率)、営業利益率がかなり高いです。
これはタバコの製造には設備投資があまり必要ではなく、また規制産業でもあるため、原価に対して販売単価が高いという特徴を示しています。
次にキャッシュフローを見ていきましょう。
(million US $) | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 |
営業活動によるキャッシュフロー | 9,478 | 10,090 | 9,812 | 11,967 |
投資活動によるキャッシュフロー | -1,436 | -852 | -602 | -748 |
財務活動によるキャッシュフロー | -10,336 | -8,034 | -8,238 | -12,394 |
フリーキャッシュフロー | 8,042 | 9,238 | 9,210 | 11,219 |
設備投資があまりいらないため、投資活動によるキャッシュフローが小さく、潤沢なフリーキャッシュフローがあることがわかると思います。ちなみに財務活動によるキャッシュフローの金額が大きいのは、収益の大半を配当金として還元していることによるものです。
次にバランスシートを見ていきましょう。
(million US $) | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 |
流動資産 | 19,442 | 20,514 | 21,492 | 17,717 |
非流動資産 | 20,359 | 22,361 | 23,323 | 23,573 |
流動負債 | 17,191 | 18,833 | 19,615 | 19,255 |
固定負債 | 33,349 | 33,641 | 35,831 | 30,243 |
自己資本 | -10,739 | -9,599 | -10,631 | -8,208 |
総債務/総資本比率 | 151.1 | 143.2 | 149.2 | 140.8 |
収益の大半を配当という形で株主還元する方針のため、余剰資金をあまり持っておらず、自己資本はマイナスとなっていますが、総債務総資本比率を見ても1.4倍くらいなのでそこまで問題にはならないと思います。
最後に各種レシオを見ていきましょう。
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | |
P/E | 13.1x | 16.6x | 15.7x | 15.9x |
P/B | -8.3x | -11.4x | -10.3x | -14.6x |
配当利回り | 6.70% | 5.40% | 5.70% | 5.20% |
配当性向 | 88.24 | 90.3 | 90.09 | 82.27 |
P/Eは15.9倍とS&P500の24倍(2022/4)と比較しても割安に見えます。
後ほど詳しく解説しますが、この割安さはESG投資におけるタバコ株株投資への抵抗感や、健康志向の高まりによる売上高の先行きの不透明感を反映しています。
一方で、配当利回りは5%を超えており、非常に魅力的な水準となっております。
配当性向も高めとなっていますが、これはタバコ株への投資家は売上高の急激な成長や株価の大きな値上がりを期待するのではなく、高い粗利率で稼いだ利益を株主に配当という形で還元することを望んでおり、フィリップモリスもそのような施策を取っているためです。
ちなみに連続増配年数はアルトリアからスピンオフされる前も含めると52年となっており、株主還元への意識の高さと収益性の高さが見て取れます。
かっぴはタバコ株が好きで、ポートフォリオの一定割合をアルトリアとフィリップモリスに投資しています。
理由は ①規制産業で参入障壁があることから、原価率が低く、収益性が高いこと ②連続増配記録が長い&配当利回りが高く、将来のキャッシュフローの拡大に貢献する と思うからです。
最後にタバコ株の特徴とESG投資について簡単にまとめました。
〜タバコ株の特徴〜
粗利率が高い
→粗利率とは売上に対して、売上から売上原価を引いた割合を示すもの。簡単に言えば、粗利率が高いほど、安く作ったものを高く売れている。タバコは製造コストに対して、高単価で販売できるため、粗利率が極めて高い特徴がある。
高配当株が多い
→高い粗利率から稼いだ潤沢なお金を株主にたくさん還元している。新しい設備投資や研究開発をあまり必要としないため、収益は配当という形で株主に還元するといった形をとっている。
インフレに強い
→依存性の高い商品であるため、インフレ局面で値上げしても、販売量が下がりにくい。
注意点
ESG投資 (Environment Social Governance)の観点から、投資を控える機関投資家が増える可能性がある。
ESGとは
・Environment (環境)二酸化炭素の削減環境破壊の回避再生可能エネルギーの利用
・Social (社会)地域社会への貢献ダイバーシティサプライチェーン上の人間への配慮
・Governance (ガバナンス)情報開示透明性の高い経営
を考慮して投資対象を判断するという考え方で、特に公的年金など莫大な資産を長期で運用する機関投資家の間で重要視されてきており、ESGの観点から投資にそぐわないと判断された場合、値崩れする可能性がある。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
ではまた。
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