バフェットの銘柄選択術(The Buffetlogy Workbook)を読みました。
これまでに読んできた株式投資に関する書籍の中で圧倒的ナンバー1として評価したい本です。
グレアムの賢明なる投資家も素晴らしかったのですが、内容が少し難しく現実に落とし込むのが難しいなと思っていたのですが、このバフェットの銘柄選択術という本は銘柄選択をするプロセスがワークブック化されており、非常にわかりやすかったです。内容を簡単にまとめた上で、下部にはワークブックもつけておきましたのでぜひご覧ください。
コモディティ型企業には投資せず、消費者独占型企業に投資する
というのがこの本で最も大切なテーマです。
■コモディティ型企業とは
この本では他と差別化できない低付加価値の事業を行う企業と定義されています。
コモディティ型企業の特徴としては
→消費者が気にするのは値段であり、価格競争が激しく利鞘が少ない
→低コスト企業だけが生き残る
→価格競争で勝つために資金を設備投資に使うしかなく、M&Aや新製品開発に資金が回らない
→景気拡大局面は一斉に利益を上げ、各社一斉に増産、賃上げが起こる
→景気縮小局面でキャッシュの流出が起こる
→経営陣が有能でないと財務的に行き詰まる
などがあります。
コモディティ型企業の見分けるには
→低い売上高利益率低いROE
→ブランド価値を築くのが難しい
→多数のライバル業界全体に過剰な生産能力
→利益の不安定性
→収益性の設備稼働率性への依存
といった点に注目すればよいです。
世の中に存在するほとんどの企業がこのコモディティ型企業に分類されます。
■消費者独占型企業とは
この本では有料ブリッジのようなビジネスを行う企業と定義されています。
川を渡るには橋(ブリッジ)を渡るしかなく、橋を渡れば料金が支払われると言った意味です。
具体的な特徴としては
→ブランド価値が高い or 強い市場支配力を持っている
→値上げの自由度が高く、収益性が高い
→株主資本を全て還元しても価値が残る
→選択の余地がない
→ブランドの維持に金がかからない
(=固定資産があまりなくても利益が出るため負債があまりいらない)
→採算を度外視しても同等の企業が作れない
などがあります。
ブランドという言葉はやや抽象的ですが、バフェットはこのブランドについて多額の資金と優秀な経営陣を用意すれば太刀打ちできる企業が作れるかといった観点から考えるそうです。
・消費者独占型企業を見分ける8つの基準
消費者独占企業を見分けるには以下の基準を満たしているかをチェックするとよいです。
基準1:消費者独占力を持つ製品・サービスがあるか
基準2:EPSが増加基調にあるか→生み出した利益が負債を何年で返せるか
基準3:多額の負債を抱えていないか
基準4:ROEは高いか
基準5:現状維持のために内部留保の大部分の再投資が必要か
基準6:内部留保を新規事業や自社株買いに自由に使えるか
基準7:インフレを価格に転嫁できるか
基準8:内部留保の再投資が株価上昇に繋がっているか
・消費者独占型企業の4つのタイプ
消費者独占型企業は以下の4つのタイプがあります。
タイプ1:長期の使用や保存が難しく、強いブランド力を持ち、販売者が扱わざるおえない製品を作る事業
→コカコーラ、ナイキ、マクドナルド、P&G、フィリップモリスなど
タイプ2:他の企業が事業を続けていくために、持続的に使用せざる負えないコミュニケーション関連事業
→ベライゾンなど
タイプ3:企業や個人が日常的に使用し続けざるおえないサービスを提供する企業
→ビザ、アメックス、アマゾン、グーグル、マイクロソフト、ウェルズファーゴなど
タイプ4:独占力を持っている小売事業
→ウォルマートなど
該当しそうな企業を自分なりに考えてみました。特に生活必需品セクターでこれまで連続増配を達成してきた銘柄が多数該当していると思います。
■絶好の買い場が訪れる4つのケース
実は消費者独占型企業の商品というのは誰もが知っているものであることも多く、消費者独占型企業を見つけること自体はあまり難しくありません。ただそういった銘柄を安く買うことが非常に難しいです。
買い値こそが投資収益率の鍵を握る
というのがこの本に書かれているもう一つの最も重要なテーマです。
言い換えると、とにかく安く買いなさいということです。
消費者独占型企業であっても安くなる場合があり、そのような買い場が訪れるケースは以下の4つに分類されます。
ケース1:相場全体の調整や暴落
→個別企業の業績とは無関係に多くの銘柄が下落する
→個別要因も重なると尚良し
ケース2:全般的な景気後退
→多くの企業の業績が悪化する
ケース3:個別企業の特殊要因
→優良企業であっても時には愚かな行動をする
→特殊要因が一時的なものかを見極めることが必要
ケース4:企業の構造変化→合併やリストラ、組織再編
日頃から消費者独占型企業を探しておき、安くなった時に原因を分析し、自信を持って買い向かうことができるように準備しておくことが最も大切です。
ある企業が消費者独占型企業だと判断できた上で、その銘柄を今の株価で買うべきか否かという判断をするためには
一株当たり利益(EPS)
自己資本利益率(ROE)
株価収益率(PER)
一株当たり純資産(BPS)
益利回り(EPS/株価)
などの意味をしっかり理解しておく必要があります。それらを踏まえて以下のワークシートでは具体的な投資判断のプロセスを解説します。パート1の企業分析はこれまでに書いてきた部分とかぶるところがあります。
バフェット流投資のためのワークシート
パート1:企業分析
Q1. その企業は消費者独占力を持っているか
Yesであればそれは何に基づくか
その消費者独占は4つのタイプのうちどれに当てはまるか
Q2. その企業の事業内容を理解しているか
子どもにわかるような説明ができるか
Q3. その企業の製品・サービスは20年後も陳腐化していないか
Q4. その企業はコングロマリットか(これはYesである必要はない)
仮にYesであれば
競争力の乏しいコモディティ型ビジネスに多角化していった結果なのか
消費者独占力のある他の企業を傘下に収めていった結果なのか
Q5. その企業の1株当たり利益(EPS)は安定成長してるか
過去10年のEPS推移と、年平均成長率を求める
Q6. その企業は安定的に高い株主資本利益率(ROE)をあげているか
過去10年のROE推移と平均を求める
Q7. その企業は強固な財務基盤を有しているか
負債/税引利益=負債を税引き利益で返済するのに必要な年数を調べる
Q8. その企業は自社株買いに積極的か
過去の発行済み株式数の推移を調べる
Q9. その企業の製品・サービス価格の上昇はインフレ率を上回っているか
ここ20年の製品価格とインフレ率を比較する
これら9個の問いに答えた上で消費者独占型の企業であると判断できた場合、今度はその銘柄の現在の株価で買うべきかを以下のパート2で分析します。
パート2:株価分析
Q10. その企業の株価は相場全体の下落や景気後退、一時的な経営問題などのために下落しているか
もしYesであればチャンス
Q11. 株式の益利回りと利益の予想成長率を計算し、国債利回りと比較せよ
今期利益に基づく益利回り(EPS/株価)
予想EPS成長率
国債の利回り
Q12. 株式を疑似債券と考え、期待収益率を計算せよ
10年後の予想BPS=今期のBPS×ROE×(1-配当性向)^10
10年後の予想EPS=10年後の予想BPS×ROE
10年後の予想株価=10年後の予想EPS×PER
今後10年間の期待収益率=10年後の予想株価/現在の株価を年換算
必要数値
過去10年間の平均ROE
過去10年間の平均配当性向
株主資本の予想成長率
直近のBPS
10年後の予想BPS
10年後の予想EPS
過去10年間の平均PER
現在の株価
10年後の予想株価
今後10年間の期待収益率
Q13. 過去のEPS成長率をもとに計算する手法で期待収益率を計算せよ
過去10年の平均EPS成長率=直近のEPS/10年前のEPS/10-1
10年後の予想EPS=直近のEPS×(1+過去10年の平均EPS成長率)^10
10年後の予想株価=10年後の予想EPS×PER
今後10年間の期待収益率=10年後の予想株価/現在の株価を年換算
必要数値
直近のEPS
10年前のEPS
EPSの平均成長率
10年後の予想EPS
過去10年間の平均PER
現在の株価
10年後の予想株価
今後10年間の期待収益率
以上のワークシートで検証した後、割安と判断できれば投資する。割安でないのであれば、相場全体の下落や景気後退、あるいは一時的な経営問題によって株価が魅力的と思える水準に下がるまで投資は控えるべきである。
以上になります。今後の個別株分析の記事ではこのThe Buffetlogy Workbookの手法を使って分析していきたいと思います。
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