※この記事は、元債券ディーラーのCappiが執筆しています。詳しいプロフィールはこちら
投資の世界で勝ち続けるために必要なものは何でしょうか? 高度な金融知識? 複雑なチャート分析スキル? もちろんそれらも重要ですが、極限のプレッシャーがかかる相場の最前線を知る私は、別の答えを持っています。
それは、「強靭なメンタルを支える、物理的な筋肉」です。
「また精神論か」と思われたかもしれません。しかし、これは根性論ではなく、脳科学とホルモンバランスに基づいた、極めて合理的な「リスク管理手法」です。 実際、ウォール街の伝説的な投資家たちの多くは、驚くほど肉体を鍛え上げているという事実をご存知でしょうか?
この記事では、私が証券会社のディーリングルームで目撃した「稼ぐプロたちの習慣」と、著名投資家の実例、そして現在の育児生活で実感している「回復のメカニズム」を交え、なぜ投資家がバーベルを握るべきなのかを解説します。
1. ウォール街の常識:なぜ億万長者の投資家は「ムキムキ」なのか?
世界金融の中心地、ウォール街。 そこでは「自分の体こそが最大の資本(アセット)」という考え方が徹底されています。
「ヘッジファンドの帝王」たちもアスリート並み
例えば、物言う株主として知られるヘッジファンド運営者、ダニエル・ローブ(サード・ポイント創業者)は、金融界きってのトライアスロン愛好家として有名です。彼は激しい市場変動に耐えうる精神力を、過酷なレースを通じて養っています。
また、著名投資家のビル・アックマン(パーシング・スクエア・キャピタル) も、テニスやフィットネスで徹底的に体を鍛えていることで知られています。 彼らは知っているのです。「不確実な相場で正しい判断を下し続けるには、脳のスペックだけでなく、それを支える心肺機能と体力が不可欠である」と。
トップ・オブ・トップの世界では、だらしない体でいることは「自己管理(リスク管理)ができていない」と見なされ、信用を失うリスクすらあるのです。
2. 証券ディーラーの現場で見た「稼ぐ人」の共通点
これは雲の上の話だけではありません。私がかつて在籍していた証券会社のディーリングルームでも、同じ現象が起きていました。
秒単位で巨額の資金が動くプレッシャーの中で、長年にわたって利益を出し続けている「トップディーラー」たち。彼らの多くは、どれだけ激務でもジム通いを欠かさない「筋トレ信者」でした。
相場はコントロールできないが、筋肉はコントロールできる
ある時、尊敬する先輩トレーダーに尋ねたことがあります。「なぜそんなに毎日ジムに行くんですか?」と。 彼は笑ってこう答えました。
「相場は俺たちを裏切るが、筋肉だけは裏切らないからな」
冗談のように聞こえますが、これは金融のプロにとっての「真理」です。 不確実性(ランダムウォーク)の塊であるマーケットと対峙し続けると、脳は常に「コントロールできないストレス」にさらされます。これを放置すると、判断力が鈍り、感情的なトレード(狼狽売りやジャンピングキャッチ)を引き起こします。
しかし、筋トレは違います。「重りを上げれば、筋肉がつく」。この「努力と結果の因果関係が明確な行為」を習慣にすることで、彼らは精神のバランスを保ち、相場に向かう自制心(ディシプリン)を取り戻していたのです。
3. 科学が証明する「投資脳」への筋トレ効果
ディーラーたちが感覚的に行っていたことは、医学的にも正しいことが証明されています。 理系の視点で、そのメカニズムを解説します。
① 脳由来神経栄養因子(BDNF)で「判断力」を最適化する
運動をすると、脳内でBDNF(脳由来神経栄養因子)という物質が分泌されることが分かっています。これは「脳の肥料」とも呼ばれ、神経細胞(ニューロン)の成長を促し、記憶力や意思決定能力を向上させる効果があります。
複雑な企業分析や、瞬時の投資判断を行う投資家にとって、脳のコンディション維持は、PCのスペックを上げる以上に重要な「設備投資」なのです。
参考リンク:
厚生労働省も、運動がメンタルヘルスや認知機能に与えるポジティブな影響を公表しています。
② 損切りのストレスホルモン「コルチゾール」を分解する
相場で損をした時、私たちの体内では**「コルチゾール」**というストレスホルモンが分泌されます。これが蓄積すると、不安感が増し、冷静な判断ができなくなります。 筋トレによる物理的な刺激は、このストレスホルモンを消費・分解するのに最も効率的な手段の一つです。
4. 【実体験】育児疲れこそ「動いて治す」アクティブレストの効果
現在、私は現役を退き、子育てをしながら投資研究を続けています。 夜泣きで睡眠不足になり、抱っこで腰はバキバキ。正直、「ジムに行く元気なんて1ミリもない」と思う日がほとんどです。
ですがある日、あまりの疲労感に「逆に動いてみよう」と思い立ち、ヘトヘトな状態で無理やりジムに行き、30分だけ汗を流してみました。
するとどうでしょう。 帰宅する頃には、あんなに重かった体が嘘のように軽くなり、イライラしていた頭の中がクリアになっていたのです。
「休む=寝る」だけが正解ではない
これはスポーツ科学で「アクティブレスト(積極的休養)」と呼ばれる疲労回復法です。 疲れているからといってダラダラ過ごすと、血流が滞り、逆に疲労物質が抜けにくくなります。あえて筋肉を動かし、血流ポンプを回すことで、肉体的な疲れも、精神的な閉塞感も、驚くほどリセットできるのです。
投資も同じです。含み損で気が滅入っている時ほど、モニターの前で悩み続けるのではなく、体を動かす。思考を強制的に切り替えるスイッチとして、筋トレ以上のものはありません。
5. 筋トレと資産形成の「複利効果」
最後に、投資家として最も強調したいのが、筋トレと資産運用の類似性です。
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投資: 元本にお金を追加し、時間をかけて複利で増やす。
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筋トレ: バーベルの重量(負荷)を追加し、時間をかけて筋肉を増やす(漸進性過負荷の原則)。
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筋トレで「継続する力」と「忍耐力」を養うことは、長期投資で最も難しい「待つ力」を鍛えることに直結します。
まとめ:体への投資は、絶対に暴落しない「安全資産」である
株価は暴落することがあります。企業の業績も悪化することがあります。 しかし、あなたが流した汗と、積み上げた筋肉資産は、決して暴落しません。
健全な判断力は、健全な肉体に宿ります。 もしあなたが「投資の成績が安定しない」と悩んでいるなら、銘柄分析の手を一度止めて、スクワットを10回やってみてください。
そこから変わる景色が、きっとあるはずです。

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