読書まとめ:教養としての投資

読書

奥野一成(おくのかずしげ)さんの書かれた教養としての投資を読みました。
内容がとても面白かったので、久しぶりに読書まとめの記事をにしたいと思います。

テレ東でどのようなことをされている方なのか分かりやすい動画があったので、ぜひこちらもご覧ください。


・著者紹介

奥野一成さんは農林中金バリューインベストメンツの常務取締役兼最高投資責任者(CIO)をされている方で、世界中から長期厳選した株式を運用するアクティブファンドおおぶねの運用を行っているファンドマネージャーです。ファンドの運用総額は4000億円近くで、その投資の意思決定の全てを行っているそうです。銘柄選択の仕方がバフェットのバリュー投資の考え方と似ており、かっぴが行っている運用方針とも似通っていたので、奥野さんの考え方は勉強になりました。

奥野さんの経歴を簡単にまとめると、京都大学法学部卒業後、日本長期信用銀行で3年間大企業向け融資営業を行い、その後3年間は長銀証券で債券トレーダーをされていたそうです。そのタイミングで長銀が破綻したため、UBS証券に転職し、東京・ロンドンで計5年間、債券トレーディングを行う傍らロンドン・ビジネス・スクールでファイナンス修士を取得。帰国後は農林中金に入庫し、プライベートエクイティファンドやヘッジファンド運用関連の部門で経験を積んだ後に、長期厳選ファンドおおぶねの立ち上げに参画し、現在に至ります。

奥野さんの経歴を見て、短期トレーディングを生業としながらも長期のバリュー投資を行っている私と共通点が多いなと感じました。かっぴも現在は短期トレーダーをやってますが、ほんとにこの職を一生続けるべきか悩んでいるところで、奥野さんのキャリアはとても参考になりました。かっぴもいずれはファンドマネージャー職に移りたいなぁと思っているところです。

では本の内容の紹介に移りたいと思います。

1章:投資家の思想が人生を成功に導く

この章では「労働者1.0」から「労働者2.0」を目指そうと書いてあります。

「労働者1.0」とは、将来が不安だから、少しでも安定したところでただお金のために、上から言われるがままに受動的に働いている状態を指します。資本家に対して使われる側のまま、労働者としてのマインドセットしか持たず、ただただ自分の時間を切り売りし、仕事が終わったら居酒屋で同僚と上司の悪口を言っているような状態です。

これに対し、

「労働者2.0」とは、資本家としてのマインドセットを持とうということです。資本家とは自分で課題を見つけ、変革する力を持っています。その力を発揮するため、産業構造を理解し、世界を知ろうという意欲を持っています。いきなり労働者が完全な資本家になるのは難しいので、まずは「他人に働かされている」というマインドを「自分が働いている」と切り替え、自分の能力を磨き、能力を誰かに売ってやろうという気構えを持とうということです。このことを著者は「労働者2.0」になろうと表現しています。

かっぴは本業としては金融機関で短期トレーダーとして働いています。常に自分の能力を磨くため、日々の業務に主体的に向き合うことに加え、英語力や日本証券アナリスト、米国証券アナリスト、エクセルVBAスキルなどを高めるべく日々努力しています。

また、個人としては米国の個別株投資を行いつつ、自分の考えをブログで配信することを行っています。

株式投資を始めると、あらゆる世界の経済、政治、歴史、業界構造を学ぶことにつながり、学んだことをブログという形で発信することで、自分の考えを整理し、形に残すことができます。

かっぴの場合は短期トレーダーとしての本業で得た知識と、株式投資で得た知識、ブログで知識をまとめていることが互いにプラスのシナジーを得ており、日々とても楽しく過ごすことができています。

そういう意味で「労働者2.0」になれているのかなと思います。

2章:私の投資家人生

この章では奥野さんのキャリアについて紹介されています。

奥野さんは学生時代はコンサルタントになりたかったそうです。今でもマッキンゼーやボストンコンサルティンググループといったコンサルティング会社は学生の間で極めて人気ですね。実際に複数社から内定を得たようですが、大学の先輩に「モノを言うだけでカネを出さないコンサルタントの話を経営者がありがたがって聞くことはない」と言われ、金融機関への就職を考えるようになったそうです。そのことがきっかけで長期信用銀行に入社することになります。めちゃめちゃエリートですね。

長銀では企業向け融資の仕事からキャリアを始め、社会人としての基礎を築いたとそうです。その後、長銀内で債券トレーディング部門に異動し、ディーラーとしての経験を積みます。かっぴと同じ仕事です。その頃に長銀が破綻し、UBS証券に転職して債券ディーラーとしてキャリアを積みつつ、ロンドン勤務のタイミングで仕事を続けながら、ロンドンビジネススクールでファイナンスの修士を取得します。またその頃にバフェットの投資手法と出会い、彼の書籍を読み漁ったそうです。

外資系金融機関の海外拠点で仕事を続けながら、夜間で修士を取り、バフェットのバリュー投資に関する本を読み漁るという、ストイックで努力家な一面が窺えます。そしてこの頃の努力が帰国後に著名ファンドマネージャーになることに繋がっているのだと思います。

帰国後、債券のディーラーを続けるべきか悩んだそうです。動物園(笑)のような環境でディーラーとして相場を張るのではなく、バフェットのような投資を日本でできないかと考えました。そこで知り合いのつてで農林中金へ入社し、オルタナティブ投資などを手掛けながら、社内ベンチャーとして、農中バリューインベストメンツに参画し、そこで立ち上げたファンドが成功し今に至ります。

3章:日本人はなぜ投資が苦手なのか

日本は世界でもトップクラスに預貯金を持つ国ではありますが、賃金はここ三十年全く伸びておらず、物価上昇と税金、社会保険料の負担が増加している分貧しくなっています。少子高齢化はこれからもますます加速し、この傾向は今後も続く可能性が高いです。この状況を打破するには日本国民が投資家になるしかないのですが、株式投資に抵抗感を示す日本人はいまだに多いです。本章ではその理由についてまとめられています。

日本で資本主義の歴史を辿ると、その考え方が入ってきたのは明治時代の頃でした。大河ドラマにもなった渋沢栄一を始め、三菱財閥、三井財閥、住友財閥なども活躍しましたが、その後資本家マインドは日本人に定着しませんでした。

その理由として考えられるのは、1つ目は敗戦によって財閥が解体され、資本家としての成功体験が失われたから、2つ目は焦土となり、金も財産もなくなったところから一から国を立て直すには全員が労働者1.0として働くしかなかったためです。本書には書かれていませんでしたが、バブル崩壊により、株式投資でひどいめにあったトラウマも日本人が株式投資に消極的な理由かと思います。

・子どもたちに資本家マインドを

これまで株式投資に消極的な理由が説明されてきましたが、日本がこれから栄えていくためには子どもたちに資本家マインドを持たせることが必要です。今後、高齢化が進展することでこれまで日本人がため込んできた預貯金は減っていきます。給料も上がっていません。そんな中で豊かさを維持するにはこれまでに蓄えてきた資本を投資し、成長の果実を受け取ることが必要です。投資によってリターンを得ることは世の中をよくしてその分前をもらうことであり、より良い投資とは何かを自分の頭で考え続けることが必要です。

4章:「投資」と「投機」は違う

この章では投資と投機の違いについて説明されています。

農地に例える説明が分かりやすかったのでご紹介します。

農地を買うとき、普通考えるのはその農地を耕したり、家畜を育てて、そこからどれだけの作物や卵がとれるのか、という考え方が投資です。

逆に5000万円で買った農地が数ヶ月後に7000万円にならないかと考え、上がった瞬間に売り抜けることが投機です。

農地を買うときは投資の考え方ができる人は多いですが、株式を買うとなぜか投機のような考え方になってしまう人が多いです。

株式を買うというのは会社のオーナーとなり、会社の利益を受け取れるということを意味するので、株式を買う場合はその会社の利益はどうなりそうかということを考えることが自然です。ただ農地と違うのは株式は常に値段が明確に表示されてしまうため、どうしても短期の値動きに一喜一憂してしまいがちです。奥野さんは株式を買う場合も、農地を買うときのような考え方をするべきだと書かれています。かっぴもこの考え方に賛成です。

5章:売らない株を買えばいい

この章ではどのような会社の株を買うべきかということについて説明されています。
投資家にとってはこの章こそが一番気になるところかもしれません。
奥野さんは一度購入したら売らなくていい会社の株を買うべきだと言っています。
奥野さんの考え方ではそのような買うべき会社には以下の三つの特徴があります。


1.付加価値があるか
2.参入障壁は高いか
3.長期的な潮流に乗っているか


1.付加価値があるか

付加価値があるかというのは簡単に言えば、人から必要とされるのかということです。
当たり前といえば当たり前ですね。人から必要とされるものを提供する会社しか長期的に利益を出し続けることができないのは当たり前ですね。

2.参入障壁は高いか

付加価値を提供できていても参入障壁が低ければすぐにライバル会社が参入してきて、価格競争に巻き込まれ、長期的に利益をあげることは難しくなります。そこでライバルが参入できないもしくは参入しようとも思えないようなサービスを提供している会社を選ぶ必要があります。奥野さんは例としてウォルトディズニーをあげています。ミッキーマウスのブランド力は絶対的で他社に真似できるものではありませんし、お金をかければ参入できるというものでもありません。アメリカにはこのような参入障壁を持っている強い企業が多いです。アップル、マイクロソフト、グーグル、マクドナルド、ナイキ、、など他社が簡単には真似できないサービスや圧倒的シェアを持つ企業がたくさんあります。

ただ、この参入障壁というのは陳腐化するリスクが常にあることを忘れてはいけないと書かれています。この変化の早い時代において、今は参入障壁があり、市場を独占していても、それに取って代わる商品やサービスが出てこないか、常にアンテナを高く持つことが必要です。

3.長期的な潮流に乗っているか

1.2を満たしていても長期的潮流に乗っていないと、今後長いスパンで見たときには利益を上げ続けることは難しいと書かれています。例えば、ナイキに関しては、今後も世界人口は増え続け、健康を意識してランニングを始める人が増えるという点で長期的潮流に乗っていますが、人々が健康を意識するようになる中でタバコの売り上げは今後も増え続けるのか、環境への負荷を考える時代に化石燃料を提供する会社はずっと利益を上げ続けられるのか、こうしたことを分析することの重要性を奥野さんは指摘しています。

かっぴの投資している連続増配バリュー株は、1.2の条件は満たしているものの3の条件に関しては怪しいものがいくつかあります。(タバコ株やエネルギー株など)
そういった銘柄のリスクを再認識できた点で、この章は非常に参考になりました。

感想まとめ

かっぴと同業の短期トレーダーを経験した後にバフェットの考え方に共感し、株式ファンドマネージャーとなっている点や、金儲けだけではなく、学生向けに講演を行ったりと積極的に対外的に情報発信を行なっていること、日本の株式アクティブファンドで素晴らしい結果を出していることなど、ただただ尊敬しました。日本人で自分のロールモデルにしたい人だなと思いました。投資に対する考え方も共感でき、モチベーションが上がりました。


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